2026.09.08

上場企業による事業承継M&A。
トライアイズ×LIMNOの事例から見る「100億円」という水準

トライアイズによるLIMNO買収の概要図。取得比率100%・取得価額6億円・株式譲渡予定日2026年10月1日、トライアイズの時価総額は約77億円であることを示す

株式会社Space R代表取締役の赤間健太です。今回は、上場企業自身が事業承継の受け皿となる、実際のM&A事例を取り上げます。

トライアイズによるLIMNOの買収

東証スタンダード上場のトライアイズ(証券コード4840)が、鳥取県の電子機器メーカーLIMNO(非上場)の全株式を6億円で取得することで基本合意しました。株式譲渡予定日は2026年10月1日です。LIMNOは売上高こそ直近2年で約25%減少しているものの、EBITDAは同期間で72%増加しており、収益性は改善しています。トライアイズはLIMNOについて「企画・販売力に課題がある一方、製造技術・品質・人材は評価できる」としており、鳥取工場の人材・技術は維持しつつ、自社のWebマーケティングやAI活用、経営管理機能を統合する方針です。

トライアイズは2026年4月に「100年企業継承カンパニー」戦略(TRIiS2.0)を掲げており、今回の買収はその一環です。後継者や販路の課題を抱える地方の技術力ある企業を、上場企業自らが承継していくという、事業承継M&Aの一つの形だと言えます。

時価総額「100億円」という水準について(私見)

ここからは私自身の見立てです。トライアイズの時価総額は、2026年8月時点で約77億円と、100億円にはまだ届いていません。以前のコラムで、グロース市場の上場維持基準が2030年から「時価総額100億円以上」に見直されることに触れましたが、100億円という水準は、市場区分を問わず、機関投資家が投資対象として意識しやすい一つの目安として語られることが少なくありません。

今回のような積極的な買収による事業規模の拡大は、単に技術承継そのものが目的であるだけでなく、事業規模を積み上げて時価総額を引き上げ、より多くの投資家層にリーチできる会社になっていく、という成長戦略の一環としても読み取れるのではないかと考えています。これはあくまで私自身の考察であり、トライアイズが公式にそう説明しているわけではない点はお断りしておきます。

※本記事は両社が発表した基本合意書締結に関する開示情報を基に作成しています。「100億円」に関する記述は赤間個人の考察であり、当事会社の公式見解ではありません。

事業承継M&Aは、PEファンドだけでなく、こうして上場企業自身の成長戦略としても機能し得ます。資本市場と経営の両方の視点を持つ立場から、こうした動きも引き続き注視していきたいと思います。